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【コラム】皐月(五月) カーネーションのお話し

ニース

《 Belles Fleurs Tokyo フラワーデザインコラム vol.15 》

カーネーション五月の第二日曜日。もうすぐ母の日、今年は5月12日ですね。

ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(1759~1840)が描いた「カーネーション」は、八重咲で今日のカーネーションと変わらない花の姿です。
この美しいカーネーションを母の日に贈る習慣は、アメリカのアンナ・ジャービスが、母の命日に追悼会を開き、母親が好きだった白いカーネーションを配った行動がアメリカで広まり、5月の第2日曜日が母の日の祝日となりました。そして母の日には、カーネーションを贈る習慣へと変化していきました。

日本でも母の日を祝うようになるのは、明治時代後期、大正時代にはキリスト教会や日曜学校などで祝うようになり、徐々に広がっていき、戦後の1947年に5月の第2日曜日を母の日と定めました。

撫子そんなカーネーションが日本に輸入されたのは、江戸時代初期以前で、オランダ語でアンジャベルまたはアンジャ(蘭: anjelier、tuinanjelier)と呼ばれていました。

『地錦抄録』(1733年発刊)には、徳川家光の時代にオランダからアンジャベルが伝来したと書かれていますが定着せず、寛文年間に再伝来して、14種の品種が記録されています。宝暦年間の1755年発刊の『絵本野山草』には、日本の撫子とともに一重の「唐なでしこ」が絵図で紹介されています。(右図:国立公文書館蔵『絵本野山草』より)

国内での栽培は、1909年(明治42年)アメリカから帰国した澤田 (名前不明)氏が、東京で栽培に挑戦したのがはじまりで、1910年(明治43年)に土倉龍次郎氏が栽培技術を完成させます。その技術を公開したことが日本での栽培生産の発展につながり、今日のカーネーションの多品種生産に繋がります。

レオナルドダヴィンチカーネーションは、聖母マリアに関係の深い花です。
キリスト(わが子)が十字架にかけられたときに聖母マリアが流した涙の跡からカーネーションが生えたといわれています。このことでカーネーションは母性愛、母と子の関係を象徴する花としての意味があります。またカーネーションはナデシコ属の植物で、その属名「dianthus」はギリシア語で「神の花」を意味し、キリストの受難の予兆の寓意としてルネサンス期の画家たちによって、作品に多く描かれました。

 『カーネーションの聖母』は、若きレオナルド・ダ・ヴィンチが1473年から1478年ごろに制作した絵画です。聖母が手に持つ赤いカーネーション。聖母はカーネーションをキリストに差し出し、キリストもそれを受け取ろうとしています。赤い色は今後の受難の血を表し、母と子すなわち教会とキリストの神秘的な結婚(赤いカーネーションは婚約を意味する)を示唆しているそうです。
キリストは自身の悲劇的な運命を受け入れ、父なる神のいる空を見上げている。というのがこの絵画の一つの解釈です。

カーネーションが持っている寓意、母と子、母性愛などの寓意が分かると、母の日のカーネーションが、元々「母の愛に感謝し胸に飾っていた」意味が、やっと今になって分かりました。

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