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【コラム】花束 ~贈る、贈られる花々の思い~

プリザーブドフラワーの花束

《 Belles Fleurs Tokyo フラワーデザインコラム vol.2 》

花束のコラム花摘む少女子供のころに、草花を摘んでは手に握りしめた思い出はありませんか?手からあふれるほどの草花を、クローバーの茎などで束ねる、あれが初めての花束作りです。
花束のことを英語でブーケと呼びますが、ブーケはもともとフランス語のbouquetで、古くは木の枝や草花が密集するという意味の古語boucから生まれた言葉です。確かに花束(ブーケ)は、花を束ねる意味とともに、草花を寄せ集めるという様子からも古語の意味が分かります。

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ツタンカーメン夫妻そのような花束を人間が手にしたのは、いつの時代でしょうか?古くは、6万年ほど前のネアンデルタール人の化石が発見されたイラクの洞窟には、死者に花を捧げていた跡があったと考古学者から報告されています。
またエジプト時代の壁画にも左右対称に束ねたロータス(蓮)の花束が描かれていますが、黄金のマスクで有名なツタンカーメン王の墳墓からは、若い王女が捧げた花束の実物が発見されています。
これら古代の花束は、枯れて消えた花が翌年には再び咲くことから、「再生」を願って捧げられたものです。(右の図は、ツタンカーメンの棺のパネルに描かれた、パピルス、蓮、ヒナゲシ等の花束を差し出す王女の姿が描かれています)

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サフォーク公爵の肖像画もう少し近年になると、花の「香り」に特徴を見出す花束が生まれます。それがノーズゲイ(Nosegay)という小さな花束です。「鼻先を楽しませる飾り」の花束で、香りのよいハーブや花で作る小さな花束を意味しています。
英国のチューダー朝(1485~1603)時代に、ペストなどの伝染病を防ぐため、またほとんど入浴もせず下水処理も出来ていない街や人々の不快な臭いから鼻を避ける為に、ノーズゲイの小さな花束が必要だったわけです。

サフォーク公爵の肖像画手元左図のサフォーク公爵の肖像画(1540年代)の手元を見てください。彼が握っている花の束が、nosegayです。手の部分を拡大したように、花束は形や作り方に決まりのない、香りのよい小さな花や香草を束ねたものだったことが分かります。

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その後この小さな花束は、今度は「花言葉」と結びついたタジマジ(Tussy MussyあるいはTussie-Mussie)という花束で流行し、現在では故エリザベス女王が必ず持たれたポージー(Posy)ブーケとして目にすることが出来ます。
この花束たちの話は、また次の機会にしましょう。

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