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【コラム】バレンタイン。 ハート形♡は、愛の表現?

《 Belles Fleurs Tokyo フラワーデザインコラム vol.12 》

もうじきバレンタイン・シーズンですね。
すぐにチョコレートを思い浮かべるのは、X世代以前の方々でしょうか。

シルフィウムの銀貨フランスでは、バレンタインを「La fête des amoureux(恋人たちのお祭り)」として楽しむように、海外では、恋人、夫婦を問わず、愛し合う人たちの特別な日なのです。よくあるのは、男性が「mon amour(愛しの人)」に真っ赤なバラを贈り、二人でディナーをして夜を過ごします。そんな大人たちの愛の日なのです。

バレンタインとハートは、お揃いのセットのようですが、この♡形は、どんな意味が込められているのでしょう?
心臓の形のイメージが強い♡ですが、この形状の元は植物の種です。紀元前7世紀頃のギリシャの植民地で栽培されていた、シルフィウムという薬草の種がハート型をしていたことから、当時発行された銀貨に刻印され、ハートモチーフが広まったそうです。(右上がその当時の銀貨)

ザビエル♡が、「心臓=ハート」として描かれるようになるのは中世からです。中世では、人間の心は(脳ではなく)心臓が司っていると考えられていました。ハート形のふたつの山は、右心室と左心室。心がドキドキする「恋愛」の、愛情表現として多くのハート形が描かれました。

特に14世紀半ばから15世紀にかけての絵画で多く描かれるのは、ハートを誰かに捧げるという図です。相手に心臓を捧げることは愛情の証とされ、絵画や詩そして物語にも心臓を捧げる、心臓を食べて心をひとつにするなどの描写が出てくるようになります。そして宗教画でも、信仰への愛の証として心臓をモチーフにした画が多く描かれるのです。

「心」を表すハート形が日本に伝来したのは、17世紀の『聖フランシスコ・ザビエル像』に代表される南蛮美術によってだといわれています。ザビエルが手にする赤い心臓がそのひとつです。

明治神宮の猪の目日本にも神社などでハートを見かけることがあります。日本のハート形は「猪目(いのめ)」と呼ばれる日本伝統の文様で、その名の通り猪の目がモチーフになったといわれています。

古くから獣の目には魔力が宿ると考えられており、猪目は魔除けや福を呼ぶ護符とされ、縁起が良い文様として建築装飾や刀の鍔に使われてきました。私たちにとっても、四つ葉のクローバーと同じように、「おめでたい形(吉祥図案)」としてハートの形に親しんできたのです。

一説には、ハートは女性そのものの象徴ともいわれます。キューピッドの矢がハートを射抜いている図は、男性(矢)が女性を射止めた「恋愛成就」の瞬間だとも解釈されていて、女性が知らず知らずのうちにハート形のモノに引き寄せられてしまうのは、自分の分身だからなのかもしれませんね。

バレンタインの花束、チョコやケーキに、ハート形が選ばれるのは、愛情とともに相手の幸運をも願う気持ちの表れではないでしょうか?

赤いバラと、素敵なバレンタイン・デーを。

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